建築家と一緒に建てる素敵な住まい
 
福岡市城南区を拠点に福岡市近郊をテリトリーに活動している設計事務所です。設計、工事監理、施工管理に日夜頑張っています。
平成16年より施工管理にも取り組んでいます。

       
サポート一級建築士事務所
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 随想(思いつくまま)


木の太い梁をあらわしにした設計が多くなった。
最近の健康志向ブームで、自然素材を使ったり杉や桧の香りを楽しみたいと希望するお客様が増えたからだ。
設計の打ち合わせで、「柱や梁を見せたい」と言われるたび、数年前に家を建てたAさんのことが思い出される。

それは3年前。
建築中のAさんの会社がリストラを始めたという。
消費税の影響で、Aさんの会社は一気に売り上げがダウンした。いつ自分もリストラされるか分からない状況らしい。
それまで夢一杯で打ち合わせに参加されていたAさんは、現場にも暗い顔で来られることも多くなり、心労が重なっているようだった。体重100キロ近くあったAさんは少し痩せているように見えた。

2ヶ月後、住宅は完成した。
完成引渡しには、Aさんご夫妻と中学生の二人のお嬢さん、それにAさんのご両親が見えた。
一緒に家の中を見て回りながら、大きな梁を見上げたAさん。
「梁かあ...」とため息をつく。
「ローンが払えんようになったらこの梁で首を吊れということか...」

空気が一瞬凍りついた。
何と答えたらいいか一生懸命言葉を捜していたそのとき、Aさんのお母さんが一言。

「あんたが首吊ったら梁が折れるばい!」
一同大爆笑。
Aさんもつられて笑顔になった。
場はガラリと雰囲気を変え、それから和気藹々と引渡しは進み笑顔の中で鍵の受け渡し。

肝っ玉母さんの一言で救われたひと時だった。
その後、Aさんの会社は持ち直し、リストラも行われず、毎日頑張って仕事に行かれているようだ。

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Mさんの趣味はラジコンカー。
子供のころから数多くのラジコンカーレースに出場して、優勝したこともある。
大人になってからは仕事が忙しくなかなか趣味に時間が取れない日々が続いた。
集めたラジコンカーはとても多い。実家の倉庫のダンボールの中にそれは眠っていた。
Mさんは家を建てると決めた時、趣味に没頭できる書斎を作ろうと
夢を膨らませて
いたという。
しかし...

予算の関係で、どこかを犠牲にしないといけなくなり、書斎は真っ先に削減の対象になった。
書斎より子供部屋、書斎より家事室が大事だと、書斎は家族全員から反対され、Mさんは泣く泣く断念せざるを得なくなった。
「山本さん、書斎は諦めた...」

その悲しそうなMさんの顔を見ていると何とかしてやろうという気が湧いて来た。
屋根裏部屋は倉庫として作ることになっていたので、それを書斎にすることは無理だった。
そこで、主寝室のクロゼットの天井を外し、そこからハシゴで別の屋根裏へ。
狭いながらも夢の書斎の計画が立てられた。

計画は秘密裏に進み、家の完成直前に屋根裏にベニヤ板で床を貼り、クロゼットにハシゴを取り付けて3帖の書斎が一気に完成。
ここにMさんの夢はささやかに実現した。

後から聞いた話だが、奥様はこの計画にうすうす気づいていたらしい。でも予算内でできるならと黙認していたという。
小さな小さな夢の実現だが、小さくてもあるのとないのとでは大違い。
趣味のラジコンカーに囲まれて、至福のときを過ごすMさんは、仕事にも精が出ていることだろう。

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数日前、事務所に年配の女性が私を訪ねて来た。ひよこ饅頭を持って。
私はちょうど留守をしていたが、その女性によると、1年半前にお世話になったのでお礼に来たと言う。

1年半前...
ああ...思い出した。
確か1月のある日。朝から雪がちらほら舞う、寒い日だった。
ちょうど寺塚から長尾に抜ける道を車で通りかかると、道端でタクシーを待っている老夫婦がいた。
ご主人は足が不自由なようで、片手に杖を持ち、その反対側の腕を奥様が支えている。

雪の日はタクシーはつかまえにくいだろうなあと思いながら前を通り過ぎた。
5分ほど走ったが、どうもその老夫婦が気になり、引き返してみた。
彼らはまだそこに居た。

「どこに行かれるんですか?」
「長浜通りまで行きます」
「よかったら送りましょうか?」
「よろしいんですか!助かります!」

後部座席のドアを開け、ご主人を抱えて乗せると、聞き取れないくらいの小さな声で「あ、り、が、と...」
奥様は、地獄で仏に会ったようなホッとした表情で「ありがとうございます、ありがとうございます」と何度もお礼を言われた。もう20分以上も寒い中、タクシーを待っていて途方に暮れていたという。

行き先は、長浜通りの心身障がい福祉センターだった。
二人を降ろしてから、「お大事に」と言って福祉センターを後にした。
バックミラーには、深々と頭を下げる奥様の姿。

事務所に訪ねて来たのは、その老婦人だった。後部座席に置いていた社用封筒に書いてあった社名と住所をメモしていたらしい。お礼に行かないと行かないとと思いながら、体調を崩し、1年以上もずっと気になっていたと、とても恐縮されていたという。
それにしても、1年半も気にかけておられたとは正直驚いた。なんと律儀な奥様だろう。
逆に、1年半も心に負担をかけ続けていたのではないかと思うと、とても申し訳ない気持ちになった。
でも心が温かくなった。

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須恵町に新築のTさん。1週間後は棟上げだ。
いつもなら棟上げ祝いにお酒を2本贈るところだが...
今回は困った。
Tさんはコンビニ経営をしておられ、お父様は酒屋。当然、コンビニでもお酒を扱っている。
酒屋にお酒のお祝いなど贈ることなどできない。まして、お祝い金など芸がない。

困っていると、友人がアドバイスしてくれた。
「お祝いと言えば、鯛じゃないかな」

なるほど!
早速そのアイデアを頂いた。
近所の魚屋に頼んで、朝一番の魚市場で玄界灘の鯛を競り落としてもらい、それを氷詰めにして、ご自宅へ届けてもらった。

Tさんは大喜び。
棟上げに駆け付けた友人たちに私を紹介してくれた。
「信頼できる設計事務所の山本さんです。家を建てるときにはこの人にお願いね」
私にとっても最高の嬉しい棟上げであった。
アイデアをくれた友人に、感謝感謝。

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同業者の友人N君。毎朝近くの公園を走っている。
彼から先日いい話を聞いた。

彼が早朝、公園を走っていると、時々会う新聞配達の少年がいる。
少年は、公園から坂道を登り切ったところにあるマンションにも新聞を配っている。
少年は、マンションの下でバイクを停め、新聞の束を抱えて、タッタッタッタッと坂道を登って行く。
どうしてマンションの下でバイクを停めて坂道を走って行くんだろう。坂道をバイクで登れば楽なのに。

ある日、彼は少年に聞いた。
「どうして坂道をバイクで登らないの」

少年は答えた。
「あのマンション、生まれたばかりの赤ちゃんがいるんです。坂道をバイクを吹かして登るとビックリして泣くんですよ」

ほう。そういうことか。納得。
バイクの音がうるさいと、新聞販売店に苦情があったのかどうかそれは分からない。でもあの少年のさわやかさから察するに、彼には少年が自発的にそういう行いをしているように見えたという。

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城南区と南区と早良区にまたがる油山。わずか600m足らずの低山だが、変化に富んだ面白い山である。
家から近いこともあってよく歩く。
油山頂上に至る中腹に福岡市市民の森が広がり、自然遊歩道も整備されている。森の中を沢が巡り、マイナスイオンを浴びて散策するにも絶好の場所だ。

そこに「水の森」という沢がある。水辺には沢ガニやあめんぼうが戯れ、木漏れ日の中で水の音に耳を澄ますと日常の喧騒から遠く離れて心が洗われる気がする。

油山市民の森は、小径まで含めると数十本の散策路があり、全部を歩くと日曜日毎に通っても1年はかかるだろう。
全部の小径を歩くのが今年の目標である。
日本アルプスの立山・剣岳を踏破したことがある。高校生の時だ。
そういう高山も素晴らしいが、地元のこういう低山や散策路を巡るのも、スローライフの中に身を置いているようでまた楽しい。

一句。
沢登り濡れし足場を探りつつ

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ある家具屋さんで「バルセロナチェア」を見かけた。
バルセロナチェアは、建築界の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエが1929年にデザインした有名な椅子で、携帯電話のCMでサッカーの中田英寿選手が座ったことで話題になった。

実は、昨年の秋、そのミースのバルセロナチェアに始めて座ることができた。
九州産業大学美術館で開催された「歴史にすわるpart.5」展でのことだ。出展された35点の魅力ある椅子は、実際に座って体感できる展示形式になっていて、世界的に有名なたくさんの椅子に座ることができた。その中で最も気に入ったのがバルセロナチェアだった。

その家具屋さんで再び座ってみて...
「何でだろう、ちょっと感じが違う...」

「歴史にすわる」展で見たものと立体感も違うような気がするし、座り心地も柔らか過ぎる。
28万円という値段を見て納得した。ノール社の正規の製品ではなく、イタリアのテクノ社のリプロダクト品だった。
ミースがデザインしてからすでに80年が経っているのでデザインの意匠権も消滅しており、どこのメーカーが製作しても問題はないのだが、やはり正規品が最高の品質なのだろう。正規品なら価格も70万円以上する。
もっとも正規品どころか、リプロダクト品さえ高くて手がでないワタシでなのでありますが...

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思い出したらノートの片隅に書いている言葉。
「入るを計り出ずるを制す」

「収入を増やす計画を立て出費を抑える」という、家計はもとより国の財政経営の基本中の基本なのだが、実はこの言葉、間違って覚えていることが分かった。
出典は中国の故事で、本当は「入るを量り出ずるを制す」つまり、「収入を勘案し出費を決める」という意味だった。どこでどう間違って覚えたのか分からないが、ひとつ勉強になった。

本題はそこではない。
消費マインドが冷え込んだまま、多くの家庭が「入るを量りて出ずるを制す」に必死になっている。
この「出ずるを制す」を実践している結果として、国内ではモノが売れず、企業も設備投資や研究開発への投資を控えている状態で、どんどん経済活動は縮小していく。

家庭だけでなく、国も「出ずるを制す」活動に入っていて、さまざまな制度の見直しや予算削減に必死になっている状況だ。国の利益が出ない仕組みはそのまま企業に連動し、企業で働く人たちに直結していく。
今こそ、「出ずる」ではなく「入る」についての戦略が必要な時期ではないだろうか。

そう考えると、間違えて覚えていた「入るを計り」は間違えていないのではないかと思えてくる。「入るを量り(収入を勘案し)」ではなく「入るを計り(収入を計画する)」に頭を切り替える必要に迫られているのではないか。
日本の国際競争力は以前10位以内に入っていたが、今では20位以下に落ちている。
夜明けは遠い。

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一年前の今頃、40歳以上がワンコイン(500円)で受けられる福岡市の特定健診を受けた。
幸い大きな健康上の問題もなくホッとしたのだが、保健医さんから体重を落とすよう指導された。明らかに運動不足とのこと。

それから一年、休みになると山歩きをしたり、できるだけ車を使わない生活を心がけて来たが、思うように体重は落とせない。
今年も特定健診を受けるつもりだが、さて、成果のなかった一年間をどう言い訳するか・・・

二年ほど前に買って、読もう読もうと思いながらそのままになっていた本を開いてみた。飛鳥新社から出版されているすべては「単純に!」でうまくいく』
そこに面白いことが書いてあった。住まいはあなたの精神状態を表す鏡だという。
なるほど。興味深い。

たとえばクロゼット、これは「身体」だそうだ。ちょっと引用してみる。

『痩せたいと思っている人の多くは、クロゼットの中に着られないものを捨てずにとっています。痩せたらまた着られるように・・・というわけです。経験から言ってそうなることはまずありません。考え方を変えましょう。
きつい服はすべて処分し、今のあなたの状態で、心地よく感じる服を買いましょう。現在の自分の体型を受け入れることが実はダイエットを成功させる近道なのです。出っ張ったおなかは憎まれると意地になってそのまま居残りますよ。』

ふうむ。目からウロコだ。
昔、将棋の羽生名人がTVの対談でこう言っていた。
「物事が成就するときは、そのことに囚われていない時が多いですね。囚われていると逆にそのことから離れて行くことが多いような気がします」と。

まさに、単純!で明快!
夕食時にビールを飲むたび後ろめたい気持ちになっていたけど、単純に楽しむことにしますか(笑)


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もっとも尊敬する建築家「宮脇檀(みやわきまゆみ)」
2003年3月に発行された書籍『眼を養い手を練れ』。宮脇没後、弟子たちによって彼の思想を後世に伝えるべきと発行された。

初めて書店でこの本を手にしたとき、若い頃こういう本に出会っていれば・・・と思わせる内容だった。
今持っているのは二冊目。一冊目は表紙も中身も外れてばらばらになるまで読み込んだ。

彼曰く
「住宅が好きだ。建築の中で一番好きだ。一回一回相手にする人間が違うのが良い。あらゆる条件が皆違っていて、ちょうどよい推理小説を息弾ませながら、しかも丹念に読み解いて行くようなプロセスが良い」

マンションも住宅のひとつではあるけれど、どうしてチラシに載っているマンションの間取りはあんなに画一的なんだろう。あれでは設計している人もあまり楽しくないだろう。敷地にいかに戸数を押し込むか、まるでパズルのようなプランニング。
設計している人が楽しくなければ、住む人が楽しいはずがない。

一つ一つの敷地の息使いを読み取って、そこに建てられるのが運命だったと思わせる、そんな住宅設計を心がけたい。
宮脇檀の気持ちがとてもよく分かる。


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前回の続き。宮脇檀(みやわきまゆみ)の話。
「眼を養い手を練れ」の中で、宮脇檀はこう言っている。

『土地の魂を感じる』
家の設計をするということは、その土地がどういう建築を要求しているかを読み取ること。
じっくり土地の言葉を聴いてみようではないか。
そのためには、まず、その土地の近所を歩いてみる。ゆっくり近づいて、遠くから敷地を眺め、違う方向からまた見る。
雨の日、風の日、暑い夏、できれば冬にもまた見てみたい。
そうして、この土地に合った建物全体の形を考えることが大切である。

そんな悠長なことはできないという人でも、是非して欲しいのが敷地のパノラマ写真を撮ること。敷地の周囲360度の写真を撮り、繋ぎ合わせて、製図台の前に貼る。毎日その写真を見て、、周囲を思い出しながらエスキースをする。
時には、設計した平面をそのパノラマ写真の真ん中に置いて、窓から景色や日照が入るかどうかを考えてみる。

(注:エスキース=計画初期時にコンセプトや概念をまとめ、検討する際のスケッチ)

いやあ「目からウロコ」の言葉。
思い返してみると、建物のプランニングの時に、建設予定地の写真を撮ることはあっても、パノラマ写真にして机の前に貼ったり、プランニングした平面図を真ん中に置いて検討することはしたことがなかった。
景色は記憶に残るがどうしても先入観が刷り込まれてしまう。しかし、写真は見返すことによって、毎回敷地に違った印象を与えてくれる。少なくとも先入観が入り込むことを防いでくれる。
本当に、目からウロコのパノラマ写真だ。

←(画像:宮脇檀氏のエスキース)


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設計という仕事は面白い。
楽しく仕事ができるということは幸せだ。
おまけに、今は自営業。死ぬまでこの仕事がやれる。これほど幸せなことがあるだろうか。

サラリーマンの友人はこう言う。
「仕事って、楽しいはずがないやろ。楽しくて給料もらえるなんてそりゃぜいたくや。仕事が苦しくてきついからお金もらえるんや。そうでもせんと勤まらんわ」
確かに、一理ある。

仕事は苦しいけれど、苦しいからやりがいもあるし、それで生活の糧が得られる。
でも、仕事はそれだけではないような気がする。
うまく言えないけれど、自己実現というか、自分がここにいて、何かをしているという自己確認というか。

設計という仕事は面白い。
たとえば、動と静。建築現場で、職人さんたちとワイワイやっていたり、建主さんとああでもないこうでもないと、現場で打ち合わせ。そういう動の部分と、事務所で何日も引きこもって図面を描いていたり。まる三日、人と会わないこともある。そういう静の部分。
図面を描いているとき、デザインを考えているとき働くのは空間をつかさどる右脳。構造的に検証しているとき、働くのは数理をつかさどる左脳。
右の脳と左の脳が行ったり来たり。

静と動。右脳と左脳。
まるで正反対の活動を毎日のように繰り返す。とてもメリハリのある仕事である。
建築家は80歳過ぎても現役の人が多い。刺激的なメリハリのある仕事のせいだろう。
今の仕事、死ぬまでやっていたい。 
  

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